ChatGPTを使って、ロゴを作ってみた!
こんにちは!Matto CDO(デザイン総責任者)のささきです。
突然ですが、「ロゴ制作をAIに頼んでみたい」と考えたことはありませんか?
手軽でコストも抑えられ、一瞬でデザインが完成!生成AIなら確かに可能です。しかし、それだけで本当にブランドの価値を高められるのでしょうか?
今回は、生成AIを使って「自動車」、「釣り」、「スポーツアパレル」、3つのロゴを実際に生成する”実験”を行いました。
生成AIが生み出すロゴはどんな仕上がりになるのか?また、デザインのプロの目から見て、実際に使用できるクオリティなのか?
結果と考察をもとに、生成AIの可能性と限界を探っていきます。
さっそく試してみる
まず、単純に「自動車メーカーMattoのロゴを作って」とだけを入力してみました。使ったのはChatGPT(DALL·E 3)。
結果は…?
見た目は綺麗ですが、ロゴとしてのインパクトは弱く、どこかで見たことがあるような印象。さらに端が切れてしまっています。
生成AIを活用したロゴ制作方法
先ほどの失敗から、まずは生成AIに「どうすればAIがより良いロゴを作れるか?」と聞いてみました。
すると「明確なコンセプトや具体的なデザイン要素を設定することが重要」とアドバイスが。
なるほど、曖昧なプロンプトでは期待通りの結果は得られないわけです!
そこで、下記の手順でロゴの制作を行うことにしました。
1. 国内外のロゴデザインの傾向を調査させる
2. ブランドの概要を伝え、ロゴデザインアイディアを考えさせる
3. ロゴデザインアイディアから実際のデザインを作らせる
Case1:自動車メーカーのロゴを生成
最初の実験対象は、自動車メーカー「Matto」。
Mattoは、EV(電気自動車)に特化した次世代の自動車メーカーとして設定。ターゲット層は、環境意識が高く、先進的な技術に興味を持つ30代から40代の車愛好家です。
プロセス
業界のロゴの傾向と設定したメーカー情報を伝え、「どんなロゴがいいか」と質問をしました。
すると、次の要素を取り入れると良いとのことでした。
●クリーンエネルギーの象徴
●動的な形状
●技術と先進性
●シンプルで記憶に残る
こちらを踏まえて、具体的なロゴのデザインアイディアを聞いていきます。
いくつかのアイディアの中から、今回は「太陽光と地球」というコンセプトの案を採用し、デザインイメージを作ってもらうことに。
デザインコンセプト:
「太陽光と地球案」
地球を囲むように配置された半円形の太陽光線をデザイン。このロゴは持続可能なエネルギー源である太陽を強調し、地球に優しいブランドの姿勢を示します。
「太陽光と地球」デザイン案①
地球を表す青い円と、それを照らす太陽の半円をオレンジまたは黄色で表現しました。このデザインはシンプルで視認性が高く、自動車のエンブレムとしても効果的です。太陽が地球に光と温もりを与える様子が感じられる、明るくポジティブな印象を与えるロゴになっています。
おぉ〜!エンブレムっぽい形が出てきましたね!
ただ、少し自動車にしてはチープな印象なので「もう少し高級感があり、ミニマルで次世代の雰囲気」を追加してもらいます。
「太陽光と地球」デザイン案②
地球を表す円は、豊かな深いブルーのグラデーションで表現され、太陽の半円はメタリックゴールドのグラデーションで描かれています。このデザインは非常にミニマリスティックで、クリーンでスリークな外観が、先進的な技術と洗練を象徴しています。
「高級感」という指示により立体的でリッチな色使いの案ができました。
ただ”陰陽”のようなデザインになってしまったので、「太陽光と地球」のコンセプトはそのままに、別の表現も作ってもらうことに。
生成AIに作ってもらった別の表現案:
「ミニマリスティックな象形」
地球と太陽を極めてシンプルな形で象形化し、その間に小さな光の点を散りばめるデザイン。これにより、太陽から地球へのエネルギーの流れを抽象的かつ芸術的に表現します。このアプローチは現代的でスタイリッシュな印象を与え、特に若い世代の顧客に訴える可能性があります。
「太陽光と地球」デザイン案(ミニマリスティックVer.)①
こちらが「Matto」のためにデザインしたミニマリスティックな象形ロゴです。地球をシンプルな円で、太陽をその周りのアーチで表現しています。その間に小さな光の点を散りばめることで、太陽から地球へのエネルギーの流れを表しています。このデザインは現代的でスタイリッシュな印象を与え、特に若い世代に訴求する可能性が高いです。
生成AIは、“ミニマル”という言葉のニュアンスを捉えられないように見えますね。また、自動車のメーカーとして求める印象、つまり品質の良さや高級感といった点なども、あまり理解していないように感じました。
先ほどと同様に「もう少し高級感があり、要素の数を削りシンプルにしてください」と指示を出します。
「太陽光と地球」デザイン案(ミニマリスティックVer.)②
こちらがさらに高級感を増した「Matto」のためのリファインされたロゴデザインです。地球は洗練された深い青色の円で表現され、太陽は細く繊細な金色のアーチで地球を優雅に包み込んでいます。要素を減らし、シンプルさとエレガンスを強調しています。このデザインは、現代的で洗練された視覚的表現を通じて、高級感とモダニティを訴えかけるものです。
太陽というより「月と地球」に見えますが、マークとしては綺麗にまとまったのではないでしょうか!
Case2:釣り具メーカーのロゴを生成
続いては釣り具メーカーの「Matto」。
Mattoは「IT×釣り」をコンセプトに、釣りの楽しみはそのままに”デジタル技術による便利さ”を付与するギアの企画〜販売を行う、釣りギアブランドです。ターゲットは、デジタルネイティブな若年層を中心に、デジタルガジェットに興味のある層としました。
プロセス
業界のロゴの傾向と設定したメーカー情報を伝えると、下記の方向性が良いとのことでした。
●シンプルで視認性が高い
●釣り関連の象徴的なシンボル
●青〜緑など自然を連想させる色
●力強くクラシックなフォントの使用
続いて具体的なロゴのデザインアイディアを相談。
デザインコンセプト:
「スマートウェーブ(Smart Wave)」
Mの文字を、波とデジタル技術を象徴するピクセルやデジタル線で構成し、「M」を中心に波が広がるデザイン。波は動きと自然の調和を象徴し、ピクセルやデジタル線は技術革新を表現。シンボルには、釣りフックを隠し要素として加え、釣りへの愛好心を示す。
色彩
ブルーとターコイズを基調にし、ホワイトをアクセントとして使用。これにより、爽やかさと未来感を演出。
波の流れとピクセルの要素が融合する部分に、デジタルの「グリッチ効果」を軽く追加し、モダンなテイストを強調。
今回はこちらの案で進めたいと思います。
「スマートウェーブ」デザイン案①
こちらが「スマートウェーブ(Smart Wave)」コンセプトに基づいたロゴデザイン案です。波の形に変形した「M」とデジタル要素を組み合わせ、自然と技術の融合を表現しています。色合いはブルーとターコイズを基調に、フレッシュで未来的な印象を与えています。
いや、待って!これはロゴではなくて完全に「絵」です。
「ぱっと見で視認できるシンプルな形」という、つまりは“ちゃんとロゴを作る”ように指示を伝えます。
「スマートウェーブ」デザイン案②
こちらがシンプルに再構築した「スマートウェーブ(Smart Wave)」コンセプトのロゴデザイン案です。視認性を高めるため、要素を削減し、簡潔な波の形に「M」を変形させ、デジタル要素を控えめに配置しています。色合いはブルーとターコイズを基調に、モダンで爽やかな印象を与えています。
一気にシンプルになりましたね(笑)
ですが、どうみてもこの形は「R」。Mattoなので「M」に見えるように指示を出します。
「スマートウェーブ」デザイン案③
こちらが「M」がより明確に見えるようにデザインした「スマートウェーブ(Smart Wave)」コンセプトのロゴ案です。シンプルでありながらも、波の形を保ちつつ、デジタル要素を控えめに取り入れています。全体的な印象を保ちながら、視認性を向上させています。
無事、Mになりました!
多少気になる部分はあるものの、デザインとしてもまとまりがあり、少し調整すればそのまま使えそうです!
Case3:スポーツアパレルブランドのロゴを生成
最後は、スポーツアパレルブランド「Matto」。
Mattoは、はじめはバスケに特化、ゆくゆくは総合スポーツを対象に展開予定のスポーツアパレルブランド。 大人の男性がスタイリッシュに着こなすブランドを目指します。
プロセス
ブランド情報と世の中のスポーツアパレルブランドロゴの傾向から、以下の特徴を持ったロゴにすると良いとのことでした。
●シンプルでクリーンなデザイン
●象徴的なシンボルの使用
●力強いタイポグラフィ
●ダイナミックなレイアウト
さっそくこの情報をもとに、ロゴアイディアを考えてもらいました。
デザインコンセプト:
「シンプルなモノグラムロゴ」
「M」と「T」を組み合わせたシンプルなモノグラムデザイン。タイポグラフィは太字でシャープなエッジを持ち、スタイリッシュで力強い印象を与えるものを選びます。
シンプルで覚えやすいデザインでありながら、ブランドのエレガントさを強調。カラーパレットはモノトーン(黒、白、グレー)を基調とし、シックで洗練された印象を持たせます。
「シンプルなモノグラムロゴ」デザイン案①
ここちらが「Matto」ブランドのシンプルなモノグラムロゴのデザインです。「M」と「T」を組み合わせた、太字でシャープなエッジを持つスタイリッシュで力強い印象のロゴになっています。モノトーンのカラーパレットでシックで洗練された印象を与え、アパレルやアクセサリーに刺繍やプリントしやすい形状です。
今回は、初めから”ロゴ”らしいデザインが出てきました!バスケっぽい雰囲気がありますし、きちんとシンプルです。
一方でこのロゴを使ったブランドが総合ブランドとして成長するイメージがあまり湧きません。「ナイキやアディダスのように一目で強く記憶に残るようなデザインが欲しい」とフィードバックを返します。
「シンプルなモノグラムロゴ」デザイン案②
シンプルでありながら強い印象を与えるスタイライズされた「M」と「T」の組み合わせを基に、スポーツブランドの象徴的な要素を取り入れたデザインとなっています。NikeやAdidasのように、視覚的に強いインパクトを与えるよう工夫しています。
Mattoという文字は消えましたが、スッキリとマークとしての強さが格段に違いますね!
良いのではないでしょうか!
実験結果から考察
今回は、デザインツールやスケッチブックを一切使わずに、言葉だけを使ってロゴを生成することに挑戦しました。
実際にやってみて、いくつかの重要なポイントが浮かび上がってきました。
①プロンプトの具体性と重要性
生成AIは、与えられたプロンプトに従ってデザインを生成しますが、指示が曖昧だと意図した通りの結果にはなりません。逆に、プロンプトが詳細で明確であればあるほど、生成されるデザインの精度は高まります。
②情報整理とコンセプト作りは上手
メーカーやブランドの前提情報をきちんと生成AIに伝えると、幅広いクリエイティブコンセプトを提案してくれました。
生成AIはLLM(大規模言語モデル)の仕組みを用いて、言葉の結びつきを学習したもので生成を行うため、論理的で多様なアイデアを出すのが得意なのだと考えられます。
③オリジナリティとクリエイティブジャンプの欠如
生成AIは論理的なコンセプトを作るのは得意ですが、競合との差別化を意識したオリジナリティのあるデザインや、既存の枠を超える斬新なアイディアは少ない印象。
大胆な創造性や革新性は生成AIには苦手な分野なのかもしれません。
④ChatGPT(DALL·E 3)の画像生成はロゴには使いづらい
DALL·E 3は、傾向として複雑なデザインを生成する傾向があるようです。
「シンプルに」「デフォルメ」「要素を少なく」といった指示を出しても、複雑な形状になるケースが多く見られました。
また、生成されるのは「1枚の画像」(ラスターデータ)であり、そのままでは印刷物やWebサイトでの利用が難しいという制約もあります。
そのため、生成されたロゴをそのまま使用する場合は、ベクターデータでの生成が可能なAdobe Illustratorのようなツールを使う方が適しているかもしれません。
まとめ
2024年時点、生成AIと共に最高のクリエイティブを生み出すには、人間がしっかりと「クリエイティブディレクション」を行うことが重要。通常のロゴ制作プロジェクトと同様に、生成AIにも情報を明確にブリーフィングし、クリエイティブの方向性やコンセプトを具体化していくプロセスが必要です。
また、生成AIとのやり取りを「人とのブレインストーミング」のように捉え、途中で生まれたアイデアを発展させていくことで、より高いクリエイティビティを引き出すことができます。
生成AIを使って手軽にアイデアを生成し、最終的にはプロのデザイナーの手で仕上げることが、ブランド価値を高めるための最適なアプローチと言えるでしょう。